2015年2月4日水曜日

印象材とアドヒーシブ8

ここまで、実験とはいえないような簡単な調査を行ってきましたが、それなりにベースとなる事象の確認はできました。ただ、この結果がそのまま臨床に当てはめられるかというとそうではないでしょう。どのような『印象採得』システムを用い、その中の具体的な条件下において、『印象材とアドヒーシブ』を正しく活かすための検証が必要であると考えています。
もくあみ会の準備で慌ただしくなっておりますので、若干?ペースは落ちるかもしれませんが、もう少し続けていきたいと思います。

印象材とアドヒーシブ7


[ 目的 ]
 インプリンシスシリコンアドヒシーブ以外のアドヒーシブの効果を検討する. 
[ 材料 ]
 アドヒーシブ:1. アドヒーシブ(GC)2.フュージョンIIアドヒーシブ(GC)3.Caulk Tray Adhesive (DENTSPLY) 
印象材:1. エグザミックスファイン(GC) 2. フュージョンII (GC)3.アクアジル(DENTSPLY)
 レジン:オストロン2(GC)
 [ 方法 ]
 ・オストロン2を通法に従い練和し, プレート状に成型 
 ・完全重合させた後, 表層をカーバイドバーにて一層切削 
 ・各アドヒーシブをプレートに1回塗布し乾燥  
・各シリコン印象材を築盛し完全硬化 
 ・ピンセットを用いてシリコン印象材の剥がれ具合を確認


[ 結果 ] 

・エグザミックスファインは多くの部分が接着していなかったが, 凝集破壊がみられた部位もあった. 
・フュージョンIIでは凝集破壊が認められた. 
・Caulk Tray Adhesiveはレジンとの界面で接着が剥がれていた. 
[ 考察とまとめ ] 
・GCアドヒーシブとCaulk Tray Adhesiveはいわゆる『とりもち』状の接着剤であり, 化学的接着に比べて信頼性に劣ると考えられる. 
・GCアドヒーシブでは一部で凝集破壊が認められ, 塗布の方法によってはある程度の接着力が得られるようだが, その方法については現段階では不確かである. 
・Caul Tray Adhesiveは, レジンとの接着力自体が弱いため, トレーに保持孔などのアンダーカットを併用しないと, 印象撤去時に大きな変形を起こす可能性がある.

印象材とアドヒーシブ6


[ 目的 ] 
レジンの種類が, 接着に及ぼす影響についてを検討する. 
[ 材料 ] 
アドヒーシブ:インプリンシスシリコンアドヒーシブ(トクヤマ) 印象材:インプリンシス (トクヤマ, インプリント4 (3M ESPE), フュージョンII(GC) レジン:ユニファスト3 ( GC ), プロビナイス(松風), キュアグレース(トクヤマ)
 [ 方法 ] 
・ユニファスト3, プロビナイス, キュアグレースを通法に従い練和し, プレート状に成型 
 ・完全重合させた後, 表層をカーバイドバーにて一層切削  
・インプリンシスシリコンアドヒーシブをプレートに1回塗布し乾燥  
・インプリンシスを築盛し完全硬化 
 ・ピンセットを用いてインプリンシスの剥がれ具合を確認



[ 結果 ] 
・全てのレジンにおいて, 十分な接着が得られた.
 [ 考察とまとめ ] 
・ユニファスト3, プロビナイス, キュアグレースのいずれも, 完全重合し表面を削合するなど適切な処理をおこなえば, 問題なくインプリンシスシリコンアドヒーシブは機能すると考えられる.

印象材とアドヒーシブ5


[ 目的 ] 
被着体としてレジンの表面性状が, 接着に及ぼす影響についてを検討する. 
[ 材料 ] 
アドヒーシブ:インプリンシスシリコンアドヒーシブ(トクヤマ) 印象材:1. エグザミックスファイン(GC) 2. フュージョンII (GC)3. インプリンシス (トクヤマ) 4. インプリント3(3M ESPE)5. インプリント4 (3M ESPE)6. アクアジル(DENTSPLY) レジン:キュアグレース(トクヤマ), オストロン2(GC) 
[ 方法 ] 
・キュアグレース, オストロン2を通法に従い練和し, ガラス練板で挟むように圧接 
・熱湯に浸漬し完全重合 
・インプリンシスシリコンアドヒーシブをプレートに1回塗布し乾燥  
・各種シリコン印象材を築盛し完全硬化 
 ・ピンセットなどを用いてシリコン印象材の剥がれ具合を確認





[ 結果 ] 
・被着体キュアグレースにおいては, フュージョンII以外の印象材で, 接着阻害が認められた. 
・被着体オストロン2においては, エグザミックスファインとインプリント4 で接着阻害が認められた. 
[ 考察とまとめ ] 
・キュアグレースの滑沢な表面性状には, 多くの印象材が接着阻害を起こしたが, オストロン2では 接着が得られたものもあった. これは, レジンのポリマーなどの違いに関係があるのではないかと考えられる. 
・臨床においては, レジン表層の削合やサンドブランスティングなどで粗面としておくことが接着力の向上に寄与すると思われる. 
・印象直前の個歯トレー内面調整の際の残留モノマーやワセリン、あるいは口腔内試適時の唾液による汚染表面に対しての影響も今後検討する余地がある.