2014年1月24日金曜日

左右的残存歯偏在について どこから偏在を意識するのか

 この患者さんを担当することになったのは2012年で、右上6番のHys症状を訴えられていた。残存歯数は24本と多く、アイヒナーや咬合三角でスクリーニングしたとしても、おそらく得られることは少ないだろう。しかし、KA367や過去の臨床記録を紐解いていくと、危機が迫っていることがわかる。代表的な既往歴としては、右上7歯根破折・下顎前歯部の自然失活・右下ブリッジの脱離があり、咬合力の強さが疑われ、パノラマや口腔内写真からもそれは合致していた。左下67欠損の時期は不明だったが、義歯は入っておらず、右側に偏った咀嚼が右上7歯根破折の呼び水となったのは間違いない。
 このときは、右上6のHys症状も偏在の延長線上に起こっていること、また大臼歯支持の必要性を説いたが、義歯・移植・インプラントのいずれも却下であった。その後、何度かのメインテナンスを経て、2014年1月に右上6の歯冠破折という形で、状況悪化は現実のものとなった。



 対角線的に67欠損が起こっている状態を我々はクロス偏在と呼んでいるが、この呼称はまだ一般的なものではないかもしれない。しかし、この欠損形態にはかなり高い頻度で遭遇するし、これからも大きな課題となるはずだ。クロス偏在に陥った後、次に危険に晒されるのは小臼歯になるが、この関門が易々と突破されるようだといよいよ本丸の犬歯がみえてくる。本症例の場合、左上犬歯陥落の道まで見えており、左右的すれ違い咬合の可能性まであるといっても言い過ぎではないだろう。

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